結論:迷ったら「すきまばめ=H7/g6」「中間ばめ=H7/js6」「しまりばめ=H7/p6」が基本形
はめあい公差の選定で迷ったら、まず次の3パターンを覚えておけば実務の8割はカバーできます。
- 回転する軸や、抜き差しする部品 → すきまばめ(例:H7/g6)
- 位置決めピンなど、ガタも圧入も避けたい部品 → 中間ばめ(例:H7/js6)
- 軽圧入で固定したい部品 → しまりばめ(例:H7/p6)
以下では、それぞれの違いと選び方の考え方を、若手設計者・現場オペレーター向けに整理します。なお、具体的な寸法公差値(μm単位の数値)は穴径によって変わるため、本記事では数値表は掲載しません。設計・加工の際は必ずJIS B 0401(寸法公差及びはめあいの方式)の原文または社内基準を確認してください。
はめあいとは何か
はめあいとは、穴と軸(または内径と外径)を組み合わせたときの、寸法のすき間・しめしろの関係を指します。同じ「直径20mm」の設計でも、穴側と軸側の寸法公差の組み合わせ方によって、部品同士がスカスカに嵌まるのか、手で押し込む程度なのか、プレスで圧入しないと入らないのかが変わります。この関係をJISでは「H7」「g6」のような記号(公差域クラス)で表します。
アルファベットの大文字は穴の公差域、小文字は軸の公差域を表し、後ろの数字は公差等級(数値が小さいほど公差が厳しい=精度が高い)を意味します。
はめあいの3分類
すきまばめ(クリアランスフィット)
穴の最小寸法が軸の最大寸法よりも大きくなる組み合わせです。組み立てた状態で必ずすき間ができるため、軸が回転したり、部品を抜き差ししたりする箇所に使います。
代表例:H7/g6
- 回転軸とすべり軸受(ブッシュ)の組み合わせ
- 位置決め用のガイドピンで、抜き差しを前提とする箇所
- 潤滑を必要とする摺動部
すきま量が大きすぎるとガタつきや振動の原因になり、小さすぎると焼き付きや組み立て不良を招きます。回転速度・潤滑方式・許容できるガタの大きさに応じて、g6以外にもf7・h6など複数の選択肢があるため、用途に応じてJIS表を参照しながら選定します。
中間ばめ(トランジションフィット)
穴と軸の寸法公差が一部重なり合い、組み合わせる個体によってわずかなすき間が出ることも、わずかなしめしろが出ることもある方式です。
代表例:H7/js6(またはH7/k6、H7/n6など)
- 位置決めピンやダウエルピンのように、ガタは許さないが分解も可能にしたい箇所
- 歯車のボスと軸のように、キーで回り止めをしつつ組み立て・分解を行う箇所
中間ばめは「手やハンマーで軽く押し込める程度」の嵌合感になることが多く、精密な位置決めが必要だが完全な圧入までは求めない場面でよく選ばれます。js6・k6・n6はしめしろの出やすさが段階的に変わるため、分解頻度や求める位置決め精度に応じて使い分けます。
しまりばめ(インターフェアレンスフィット)
穴の最大寸法よりも軸の最小寸法が大きくなる組み合わせです。組み立てた状態で必ずしめしろ(締め代)が生じ、圧入やプレス、焼きばめなどの方法で組み立てます。
代表例:H7/p6、H7/r6など
- 軸受の内輪を軸に固定する箇所(圧入)
- 歯車やプーリーをキーなしで軸に固定したい箇所
- 分解を前提としない恒久的な固定部
しめしろが大きいほど強固に固定できますが、圧入荷重が過大になると部品の変形や割れ、圧入設備の負荷増大につながります。しめしろの大きさは軸受メーカーの推奨値や社内基準に従って選定するのが安全です。
なぜ「穴基準式(H基準)」が一般的なのか
実務では、穴側の公差をH(下の寸法許容差がゼロ)に固定し、軸側の公差記号(g6・js6・p6など)を変えることで、すきまばめ~しまりばめを作り分ける「穴基準式」が広く使われています。理由は主に次の2点です。
- 穴の加工・検査が軸より難しい — 穴はドリルやリーマ、中ぐり加工で作られ、内径の測定にも専用ゲージが必要です。加工・測定の手間が大きい穴側の公差を固定してしまえば、工具やゲージを共通化しやすくなります。
- 標準工具・標準ゲージとの相性が良い — リーマやプラグゲージはJISで規格化された寸法があり、穴基準にしておけば標準工具・標準ゲージをそのまま使い回せます。軸は旋盤加工で任意の寸法に仕上げやすいため、軸側で寸法を調整する方が合理的です。
これに対して、軸側を基準にする「軸基準式(h基準)」は、1本の軸に複数の穴部品(ベアリングなど)を組み付ける場合に使われることがあります。どちらを使うかは設計全体の方針や既存図面との整合性で決まるため、社内の設計標準を確認しましょう。
選定の実務フロー
- その箇所に求める機能を明確にする(回転・摺動が必要か、位置決めだけでよいか、固定したいか)
- 機能に応じて「すきま・中間・しまり」のどれに該当するかを判断する
- 代表的な組み合わせ(H7/g6、H7/js6、H7/p6など)から近いものを選ぶ
- 穴径・要求精度・組み立て方法(手組みか圧入設備を使うか)を踏まえて、公差等級(6級・7級など)や記号の細部を調整する
- 迷った場合や特殊な条件(高速回転、高精度位置決め、大径の圧入など)では、JIS B 0401の該当表または軸受・工具メーカーの技術資料で数値を確認する
自分で候補のはめあいを検討したら、実際の数値でイメージを確認したい方ははめあい公差計算ツールをご利用ください。穴径と公差記号を入力するだけで、想定されるすきま・しめしろの目安を確認できます。
まとめ
はめあい公差の使い分けは、まず「すきまばめ・中間ばめ・しまりばめ」のどれが必要な機能かを判断し、そこから代表的な組み合わせ(H7/g6、H7/js6、H7/p6)を出発点にするのが実務的です。細かい数値は穴径や条件で変わるため、最終的な数値決定は必ずJIS B 0401や社内基準、軸受メーカーの資料で裏付けを取りましょう。
条件を変えながらすきま・しめしろの目安をシミュレーションしたい場合は、はめあい公差計算ツールもあわせてご活用ください。
本記事は一般的な目安です。実際の設計・加工判断は自社基準・図面指示・JIS規格原文をご確認ください。
最終更新日: 2026年7月9日