ベアリング(転がり軸受)の基礎|種類・型番の見方・選び方を解説

ベアリング(転がり軸受)は、回転する機械にほぼ必ず組み込まれている基本的な機械要素です。モーターやポンプ、工作機械の主軸、自動車の車輪、家電のファンまで、軸が回るところにはたいていベアリングが使われています。しかし新人の設計者や生産技術者にとって、「6203ZZ」のような型番が何を表すのか、どの種類を選べばよいのかは、最初は戸惑いやすいポイントです。

この記事では、転がり軸受の主な種類、型番(呼び番号)の見方、そして選び方の基礎を、実務で必要になる順序に沿って整理します。JISや各メーカーのカタログを読み解くための土台として、新人〜若手の方が最初に押さえておきたい内容をまとめました。細かな計算式よりも、まず「型番が読めて、種類の当たりが付けられる」状態を目指します。

目次

ベアリング(軸受)とは

軸受(じくうけ、bearing)とは、回転または直線運動する軸を支えながら、その運動を滑らかにし、摩擦や摩耗を減らす機械要素です。軸を「受ける」部品であることから軸受と呼ばれます。回転する軸をただ穴に通しただけでは、接触部で大きな摩擦や発熱、摩耗が生じてしまいます。軸受はこの摩擦を小さく抑え、軸を正しい位置に保つ役割を担います。

軸受は大きく二つに分けられます。ひとつは、軸と受け側の面が直接すべりながら荷重を支える「すべり軸受」です。構造が単純で静粛性が高く、大きな荷重や衝撃に強い一方、始動時の摩擦が大きく、潤滑の管理が重要になります。もうひとつが、玉やころといった転動体が軸と外側の間を転がることで荷重を支える「転がり軸受」で、一般に「ベアリング」と呼ばれるのはこちらを指すことが多いです。摩擦が小さく規格化が進んでいるため、選定や交換がしやすいのが特徴です。

転がり軸受は基本的に、外輪・内輪・転動体(玉またはころ)・保持器(リテーナ)の四つの要素で構成されます。内輪は軸に、外輪はハウジング(軸受を収める側)に取り付けられ、その間を転動体が転がります。保持器は転動体どうしの間隔を保ち、片寄りや接触を防ぐ役割をもちます。転がり軸受は世界的に寸法や型番が標準化されており、同じ呼び番号であればメーカーが違ってもほぼ互換して使える点も、実務で扱いやすい大きな理由です。

転がり軸受の主な種類

転がり軸受は転動体の形状や列数によって多くの種類があり、それぞれ得意な荷重の方向や特徴が異なります。転動体が球状の「玉軸受」は高速回転や低摩擦に向き、円柱状・円すい状の「ころ軸受」は接触が線になるため大きな荷重に耐えられる、という違いをまず押さえておくと整理しやすくなります。代表的なものを、受けられる荷重の方向(ラジアル/スラスト)とあわせてまとめます。

種類主な荷重方向特徴の目安
深溝玉軸受ラジアル中心(スラストも可)最も汎用的。高速回転に向き、価格も入手性も良い
アンギュラ玉軸受ラジアル+一方向スラスト接触角をもち、組合せで両方向の軸方向荷重を受ける
自動調心玉軸受ラジアル中心外輪軌道が球面。軸の傾きやたわみを吸収できる
円筒ころ軸受ラジアルに強い転動体が線接触で大きなラジアル荷重に耐える
円すいころ軸受ラジアル+スラスト大きな複合荷重に強い。二個一組で使うことが多い
スラスト軸受スラスト(軸方向)軸方向荷重を専用に受ける。ラジアルは受けない

迷ったときは、まず最も汎用的な深溝玉軸受を基準に考えるのが実務での定石です。より大きな荷重や軸の傾き、軸方向荷重の大きさといった条件が加わったときに、それぞれ適した種類へ置き換えていくと選定が進めやすくなります。たとえば軸のたわみや取付誤差が避けられない場合は自動調心玉軸受、重いラジアル荷重が続く場合は円筒ころ軸受、といった具合に、条件から逆算して候補を絞り込みます。

身近な例として、自転車のハブやスケートボードの車輪にも深溝玉軸受が使われています。日常的に目にする「ベアリング」の多くはこの深溝玉軸受であり、まずこの基本形の構造と型番を理解しておけば、他の種類へ応用して考えやすくなります。

なお、玉軸受は点接触、ころ軸受は線接触という違いがあり、同じ外形寸法ならころ軸受のほうが負荷能力は高くなります。その反面、ころ軸受は玉軸受よりも高速回転や軸の傾きに弱い傾向があるため、回転数と荷重のどちらを優先するかで選び分けます。

ラジアル荷重とスラスト荷重

軸受を選ぶうえで最初に理解しておきたいのが、荷重の「方向」です。軸に対して直角(半径方向)にかかる荷重を「ラジアル荷重」、軸に沿った方向(軸方向)にかかる荷重を「スラスト荷重」と呼びます。たとえば、プーリやギヤで軸を横から引っ張る力はラジアル荷重、はすば歯車やファンで軸方向に押される力はスラスト荷重にあたります。実際の機械では、両者が同時にかかる「複合荷重」となることも多くあります。

荷重の種類向き得意な軸受の例
ラジアル荷重軸に直角(半径方向)深溝玉軸受、円筒ころ軸受、自動調心玉軸受
スラスト荷重軸方向スラスト軸受、アンギュラ玉軸受(組合せ)
複合荷重ラジアル+スラスト円すいころ軸受、アンギュラ玉軸受

深溝玉軸受はラジアル荷重が中心ですが、ある程度のスラスト荷重も受けられる万能型です。一方、円筒ころ軸受はラジアル荷重に非常に強い反面、軸方向にはほとんど拘束しません。スラスト荷重が大きい場合はアンギュラ玉軸受や円すいころ軸受を組み合わせる、あるいはスラスト軸受を併用するといった設計になります。かかる荷重の方向と大きさを把握することが、種類選定の出発点です。

ベアリングの型番の見方

転がり軸受の型番は「呼び番号(呼び)」と呼ばれ、基本記号と補助記号の組み合わせで構成されます。例として、深溝玉軸受でよく使われる「6203ZZ」を分解して読んでみましょう。

記号位置意味
61桁目軸受形式(6=深溝玉軸受)
22桁目直径系列(外径や幅の大きさの区分)
033〜4桁目内径番号(03=内径17mm)
ZZ末尾両側シールド(鋼板製の非接触シールド)

つまり「6203ZZ」は、内径17mmの深溝玉軸受で、両側に鋼板シールドが付いたタイプ、という意味になります。先頭の数字が軸受の形式を表し、深溝玉軸受は「6」、アンギュラ玉軸受は「7」、自動調心玉軸受は「1」や「2」などが使われます。二桁目の直径系列は、同じ内径でも外径や幅がどれくらいの大きさかを示す区分で、数字が大きいほど頑丈で負荷能力が高くなる傾向があります。

別の例として「6000」は内径10mmの深溝玉軸受で直径系列が小さい薄型タイプ、「6310」は内径50mmで直径系列が大きい重荷重向けタイプ、と読み解けます。末尾の補助記号は、シールドやシールの有無、内部すきま、精度等級などを表します。呼び番号は「形式+直径系列+内径番号+補助記号」という並びで読めば、はじめて見る型番でもおおよその素性を把握できます。

内径番号の読み方

型番の中でつまずきやすいのが内径番号です。内径番号は下二桁で表され、00〜03までは決まった値、04以降は「番号×5(mm)」というルールになっています。よく使う対応を表にまとめます。

内径番号内径寸法内径番号内径寸法
0010mm0630mm
0112mm0735mm
0215mm0840mm
0317mm1050mm
0420mm1260mm
0525mm20100mm

たとえば「6205」なら内径番号は05なので内径25mm、「6208」なら08で内径40mm、「6212」なら12で内径60mmです。04以降は番号を5倍すれば内径が求められるため、覚えてしまえば計算は簡単です。00〜03だけは例外的な値なので、この四つ(10・12・15・17mm)はそのまま暗記しておくと現場で役立ちます。逆に、軸径が分かっていれば必要な内径番号もすぐに逆算でき、候補となる型番を素早く絞り込めます。

シール・シールド・すきま記号

補助記号のうち、実務で頻繁に目にするのがシール・シールド関係の記号です。これらは軸受内部への異物侵入やグリースの漏れを防ぐカバーの種類を表します。メーカーによって記号が異なる場合があるため、代表的なものを整理します。

記号種類特徴
開放(記号なし)シールなし放熱性・高速性に優れる。潤滑と防塵は別途管理
ZZ / 2Z両側シールド鋼板製の非接触カバー。すきまがあり高速に向く
LLU / 2RS両側接触シールゴム製で密封性が高い。防塵・防水性に優れる

接触シール(LLU・2RS)は密封性が高い反面、シールが軌道輪に触れるため摩擦が増え、許容回転数はやや下がります。非接触シールド(ZZ)はすきまがあるぶん高速回転に向きますが、密封性は接触シールほどではありません。使用環境の清浄度と回転数のバランスで選びます。粉じんや水がかりの多い環境では接触シール、クリーンで高速な用途ではシールドや開放、という選び分けが基本になります。

また、CN・C3・C4などの「すきま記号」もよく登場します。これは軸受内部の転動体と軌道輪の間のすきま(内部すきま)を表し、Cのあとの数字が大きいほどすきまが大きくなります。標準はCN(記号を省略することが多い)で、温度上昇の大きい用途やしまりばめを強めに取る場合には、はめあいによってすきまが詰まることを見越してC3など大きめのすきまを選ぶことがあります。

ベアリングの選び方

実際に軸受を選ぶときは、次のような項目を順に検討していきます。いずれの数値も最終的にはメーカーカタログの諸元と照らし合わせて確認します。

検討項目確認するポイント
荷重の種類と大きさラジアル/スラスト/複合か、大きさはどれくらいか
回転数使用回転数が許容回転数の範囲内か
寿命基本定格寿命(L10)が要求年数を満たすか
取付スペース軸径・ハウジング内径・幅の制約に収まるか
潤滑グリース封入か給油か、補給の可否
環境温度・水分・粉じん・振動などの条件

負荷能力の目安には「基本動定格荷重(C)」と「基本静定格荷重(C0)」があります。回転しながら荷重を受ける場合は動定格荷重、静止または低速で荷重を受ける場合は静定格荷重を基準に検討します。基本定格寿命は、同じ軸受を多数運転したときに90%が破損せずに回転できる総回転数(または時間)で表され、荷重が大きいほど寿命は短くなります。

実務では、まず軸径から内径番号を決めて候補を絞り、荷重・回転数・寿命がカタログ値を満たすかを確認し、最後にシールやすきまなどの補助記号を用途に合わせて決める、という順序で進めると迷いにくくなります。これらの値と計算方法はメーカーのカタログや技術資料に示されているので、まずはそれを読む習慣をつけると選定の精度が上がります。

また、軸を二か所で支える一般的な構成では、片側を軸方向に固定する「固定側」、もう片側を軸の伸縮を逃がす「自由側」として設計します。温度変化による軸の伸びを自由側で吸収させることで、軸受に無理な予圧がかかるのを防げます。この固定側・自由側の考え方も、実務では取付とあわせて重要になります。

取付と使用の注意点

軸受は選定だけでなく、取付方法によっても寿命が大きく変わります。まず重要なのが「はめあい」です。一般に、回転する側の軌道輪はしまりばめ(きつめ)にして空転(クリープ)を防ぎ、静止側は適正なすきまばめとします。内輪が軸とともに回る一般的な構成では、軸を基準に内輪をしまりばめ、ハウジング側は少しゆるめにするのが基本です。はめあいの考え方ははめあい公差の使い分けの記事も参考にしてください。

圧入する際は、力を伝える向きに注意します。内輪を軸に圧入するときは内輪だけを、外輪をハウジングに圧入するときは外輪だけを押すのが原則です。転動体を通して反対側の軌道輪を押すと、玉やころ、軌道面に打痕(圧痕)が付き、早期破損の原因になります。強いしめしろが必要な場合は加熱による焼きばめを用いることもあります。圧入やしめしろの決め方については圧入(しまりばめ)の基礎で詳しく解説しています。

そのほか、異物の混入を防ぐこと、適切な潤滑を保つこと、必要に応じて予圧(あらかじめ与えるわずかな荷重)で剛性と回転精度を高めることも、軸受を長持ちさせるポイントです。軸やハウジングの材質・硬さも寿命に影響するため、機械材料の記号の読み方もあわせて理解しておくと設計判断がしやすくなります。

参考になる書籍

(PR)機械設計の基礎から実務まで、一冊手元に置いておくと役立つ定番のリファレンスです。

使う上での注意

本記事で紹介した型番の体系や内径番号のルール、寿命計算の考え方は、転がり軸受の基礎を理解するための一般的な目安です。補助記号(シール・すきま・精度など)の表し方はメーカーによって異なる場合があり、同じ意味でも記号が違うことがあります。

実際に軸受を選定・発注する際は、必ず使用するメーカーの最新カタログや技術資料、およびJIS B 1512(転がり軸受の呼び番号)などの規格で正式な仕様・数値を確認してください。本記事の内容は参考情報であり、これに基づく設計・製作の結果について責任を負うものではありません。最終的な判断は、実際の使用条件とメーカーの指定値に基づいて行ってください。

この記事を書いた人

和田 慎(わだ しん)。機械設計歴8年。個人事業主として、主に自動車業界向けの専用機(専用装置)の設計を手がけています。現場で実際に使う計算や図面の知識を、新人の頃につまずいた経験をふまえて、できるだけわかりやすくまとめています。記事の数値や規格は目安であり、実際の設計・加工はJIS規格・メーカー資料・社内基準をご確認ください。

目次