アルミ合金の種類と選び方|A5052・A2017・A7075など番手の意味を解説

アルミ合金は、鉄鋼やステンレスと並んで機械設計・製造の現場で広く使われる代表的な金属材料です。「軽い」というイメージが先行しがちですが、実際にはA5052・A2017・A7075といった番手(記号)ごとに強度や耐食性、加工性が大きく異なります。番手の意味を理解せずに選ぶと、強度不足や思わぬコスト増、加工トラブルの原因になりかねません。この記事では、新人〜若手の実務者に向けて、アルミ合金の4桁番手の意味から、代表的な合金の特徴、そして実務での選び方の考え方までを、比較表を交えながら体系的に解説します。まずはアルミ合金という材料全体の性格をつかむところから始めましょう。

目次

アルミ合金とは

アルミニウム(Al)は比重が約2.7と、鉄(約7.9)のおよそ3分の1しかない軽量な金属です。純アルミニウムのままでは強度が低いため、実際の構造部品や機械部品にはマグネシウム(Mg)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、ケイ素(Si)、マンガン(Mn)などの元素を添加した「アルミ合金」として使われます。添加する元素とその割合、そして熱処理の有無によって、同じアルミでも性質が大きく変わるのが特徴です。

鉄鋼やステンレスと比較すると、アルミ合金は「軽くて錆びにくいが、鉄ほど硬くも強くもなく、たわみやすい」という位置づけになります。強度そのものは熱処理型のジュラルミン系で鋼材に迫るものもありますが、剛性(変形のしにくさ)はヤング率で決まるため、材料を7075に替えても同じ形状ならたわみ量はほとんど変わりません。この「強度は上げられても剛性は上がらない」という性質は、アルミを使ううえでの基本として覚えておきたいポイントです。

アルミ合金に共通する主な長所は、軽量であること、表面に緻密な酸化皮膜をつくるため耐食性に優れること、そして熱伝導率・電気伝導率が高いことです。塗装や着色との相性もよく、リサイクル性が高い点も環境面での利点といえます。一方で、鉄鋼に比べるとヤング率(縦弾性係数)が約3分の1と低く、たわみやすい点や、疲労限度が明確に現れにくい点、溶接部の強度が落ちやすい点などは、設計上の注意点として押さえておく必要があります。

また、アルミ合金は強化のしくみによって「熱処理型合金」と「非熱処理型合金」の2つに大きく分けられます。2000系・6000系・7000系は熱処理型で、溶体化処理と時効処理(焼入れ・時効)によって強度を引き上げます。一方、1000系・3000系・5000系は非熱処理型で、圧延などの冷間加工の度合い(加工硬化)によって強度が決まります。この違いは、後述する質別記号を読み解くうえでも重要になります。

アルミ合金の番手(4桁)の意味

アルミ合金の番手は、JISでは「A+4桁の数字+質別記号」で表されます。たとえば「A5052P-H34」であれば、A5052が合金の種類、Pが板(Plate)などの形状、H34が質別(調質状態)を表します。このうち最初の1桁が最も重要で、主要な添加元素=合金系統を示しています。1000系から7000系までの系統と、その特徴を整理すると次のとおりです。

系統主な添加元素特徴代表番手
1000系純アルミ(Al99%以上)加工性・耐食性・導電性が良いが強度は低いA1050 / A1100
2000系銅(Cu)高強度(ジュラルミン系)だが耐食性は劣るA2017 / A2024
3000系マンガン(Mn)中程度の強度と良好な加工性・耐食性A3003
4000系ケイ素(Si)溶融点が低く溶接・ろう付材に使われるA4043
5000系マグネシウム(Mg)強度と耐食性のバランスが良い汎用材A5052 / A5083
6000系Mg+Si押出性・耐食性に優れ構造用形材に多いA6063 / A6061
7000系亜鉛(Zn)+Mgアルミ最高クラスの強度(超々ジュラルミン)A7075

数字の千の位で「どんな元素を主に添加しているか」がわかれば、その合金のおおまかな性格を推測できます。銅を含む2000系や亜鉛を含む7000系は高強度だが耐食性は劣る、マグネシウム系の5000系は強度と耐食性のバランスが良い、といった具合です。

番手のうしろに付く質別記号も実務では欠かせません。代表的なものに、焼なましして最も軟らかい状態を表す「O材」、冷間加工で硬化させた状態を表す「H材」(H14・H34など)、熱処理で強度を高めた状態を表す「T材」(T6など)があります。同じA5052でもO材とH34材では強度が大きく異なるため、番手だけでなく質別まで含めて指定することが大切です。以下では、実務で使う頻度の高い代表的な番手を系統ごとに見ていきます。

A1050・A1100(純アルミ系)

1000系は純度99%以上のアルミニウムで、A1050やA1100が代表です。強度は低いものの、展延性が高く曲げ・絞りなどの加工がしやすく、耐食性・熱伝導性・電気伝導性に優れます。反射板、放熱板、電気・電子部品、化学装置の内張り、装飾用途などに用いられます。

強度を求められる構造部品には向きませんが、「加工しやすく錆びにくいアルミが欲しい」「導電・放熱を重視したい」といった用途では第一候補になります。番手が大きいほど純度がわずかに高くなる傾向があり、A1070などさらに高純度のグレードもあります。用途に応じて純度と加工しやすさのバランスで選ぶとよいでしょう。

A5052(Mg系・最も一般的な汎用材)

A5052はマグネシウムを主成分とする5000系の代表で、アルミ板材のなかで最もよく使われる汎用材です。中程度の強度と優れた耐食性を両立し、加工性・溶接性も比較的良好なため、板金部品、筐体、カバー、燃料タンク、車両・船舶部品など幅広い分野で使われます。海水や大気環境に対する耐食性が高いことも、屋外用途で選ばれる理由です。

参考として、A5052-H34の引張強さはおおむね235MPa前後、A1100-H14で110MPa前後、A2017-T4で425MPa前後、A7075-T6で570MPa前後が目安とされます。数値は質別によって大きく変わるため、あくまで系統ごとの強度感をつかむための参考値として捉えてください。実際の設計値はミルシートや規格値を確認します。

「とりあえず迷ったらA5052」と言われるほど流通量が多く、板厚のバリエーションも豊富で入手性・コスト面でも扱いやすい材料です。より高い強度や耐食性が必要な場合は、同じ5000系でもMg量の多いA5083(船舶・低温・圧力容器用途など)が選ばれます。まず基準として押さえておきたい合金です。

A2017・A2024(ジュラルミン系)

2000系は銅を主に添加した合金で、A2017は「ジュラルミン」、A2024は「超ジュラルミン」と呼ばれます。熱処理により鉄鋼材料に匹敵する高い強度が得られる一方、銅を含むため耐食性は他系統より劣り、そのまま屋外や湿潤環境で使うと腐食しやすい点に注意が必要です。

用途としては、航空機部品、各種治具、シャフト、強度を要する機械部品などが挙げられます。耐食性の弱さを補うため、アルマイト処理や塗装などの表面処理を併用するのが一般的です。切削加工では被削性が良く、寸法精度を出しやすいため、精密な治工具材料としても重宝されます。溶接には向かないため、締結や機械加工を前提に使うのが基本です。

A7075(超々ジュラルミン)

7000系のA7075は、亜鉛とマグネシウムを主成分とし、アルミ合金のなかで最高クラスの強度を持つ材料で「超々ジュラルミン」と呼ばれます。引張強さは一般構造用鋼に匹敵し、軽量で高強度が求められる航空機部品、金型(プラスチック成形型やチェック治具のベースなど)、スポーツ用品などに使われます。

板厚や形状によっては、7075より入手しやすく安価な2017・2024で要求強度を満たせる場合もあります。強度が必要な部品でも、まずジュラルミン系で成立しないかを検討し、それでも足りない場合に7075を選ぶ、という順序で考えると過剰品質を避けやすくなります。

ただし、耐食性は2000系と同様に高くなく、応力腐食割れにも配慮が必要です。また材料コストが高く、入手性も汎用材ほど良くありません。「強度を最優先し、徹底的に軽量化したい」という明確な理由があるときに選ぶ材料で、コストと耐食性の面から用途を見極めて使うことが重要です。過剰品質にならないよう、要求強度に対して本当に7075が必要かを吟味しましょう。

A6063・A6061(Mg-Si系)

6000系はマグネシウムとケイ素を添加した合金で、押出加工性に優れるのが特徴です。A6063は押出形材の代表格で、サッシやフレーム、アルミパイプ、各種構造用形材に広く使われ、耐食性・表面処理性にも優れます。複雑な断面形状の形材を作りやすい点が大きな利点で、アルミフレーム(構造材)の多くはこの系統です。

A6061はA6063より強度が高く、構造用材料として板・棒・形材で使われます。強度・耐食性・加工性のバランスが良く、フレーム構造やアルミ製の治具・架台などに適しています。ボルト締結や溶接を伴う構造部材として、実務で選ばれる機会の多い合金です。5000系ほど溶接性は高くありませんが、熱処理型として強度を確保できる点が魅力です。

主要アルミ合金の比較表

ここまで紹介した代表的なアルミ合金を、強度・耐食性・加工性・用途の目安で整理すると次のようになります。◎〜△はあくまで相対的な目安であり、質別(調質)や板厚によっても変わる点に注意してください。

系統代表番手強度耐食性加工性主な用途
1000系A1050 / A1100放熱板・反射板・導電部品
5000系A5052板金部品・筐体・汎用板材
2000系A2017 / A2024治具・航空部品・機械部品
7000系A7075◎◎金型・航空部品・高強度部品
6000系A6063 / A6061○〜◎押出形材・構造用フレーム

アルミ加工と表面処理

アルミ合金は鉄鋼に比べて被削性が良く、切削加工がしやすい材料です。ただし軟らかい材質ゆえに構成刃先が生じやすく、バリや「かじり」、傷が付きやすい面もあります。切削油や刃具の選定、送り・回転数の設定、取り扱い時の養生には配慮が必要です。とくに純アルミ系や5000系の軟らかいグレードは、切粉が刃物に溶着しやすい点に注意します。溶接は5000系や6000系で行われますが、溶接部(熱影響部)は母材より強度が低下するため、強度設計では溶接部を考慮します。

なお、アルミは熱伝導率が高いため溶接時に熱が逃げやすく、予熱や溶接条件の管理が必要になります。また、切削・研磨時の粉じんは発火・粉じん爆発のおそれがあるため、集じんや火気管理といった取り扱い上の安全にも注意が必要です。用途と加工方法をセットで考えることで、材料選定の失敗を減らせます。

表面処理としては、陽極酸化処理(アルマイト)が代表的です。人工的に厚い酸化皮膜を形成することで耐食性・耐摩耗性を高め、着色も可能になります。とくに2000系・7000系のように素地の耐食性が低い合金では、アルマイトや塗装による保護が実務上ほぼ必須と考えておくとよいでしょう。硬質アルマイトを施せば摺動部の耐摩耗性を高めることもできます。

アルミ合金の選び方

アルミ合金を選ぶときは、要求される「強度」「耐食性」「加工性」「コスト」「軽量化の必要度」を整理したうえで、系統から絞り込むのが基本です。とくに用途が定まっていない汎用板材ならA5052、押出形材や構造フレームなら6000系、屋外環境で高強度が必要なら耐食性の弱さを表面処理で補う前提でジュラルミン系、といった具合に、系統の性格から候補を挙げると迷いにくくなります。まず系統を決め、次に質別を決める、という順序で考えると整理しやすいでしょう。

コスト面では、一般に純アルミ系や5000系の汎用材が安価で入手しやすく、2000系や7000系の高強度材は割高になります。強度が不足すると事故につながりますが、逆に過剰な高強度材を選ぶとコストが跳ね上がり、加工や表面処理の手間も増えます。要求性能を満たす範囲で、できるだけ流通量が多く扱いやすいグレードを選ぶことが、実務ではコストと品質のバランスをとるうえで有効です。

また、アルミは軽量化のメリットが大きい反面、ヤング率が低くたわみやすいため、強度だけでなく剛性(変形量)も検討する必要があります。設計段階では部品重量やコストを見積もるために、比重をもとにした重量計算が欠かせません。材料選定の前提知識として、機械材料の記号の読み方金属材料の比重一覧もあわせて確認しておくと、番手や質別の理解がスムーズになります。実際の重量見積もりには金属の重量計算ツールを使うと便利です。

参考になる書籍

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使う上での注意(免責)

本記事で示した強度・耐食性・加工性などの評価や用途はあくまで一般的な目安であり、実際の特性は合金の質別(調質記号)、板厚、ロット、メーカーによって異なります。設計・材料選定にあたっては、JISなどの規格やメーカーの材料データシート(ミルシート)で正式な数値を必ず確認してください。

また、寸法・重量の計算結果や本記事の情報を用いて生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いかねます。安全性が要求される用途では、必ず一次情報にあたり、必要に応じて専門家や材料メーカーへ確認したうえでご判断ください。

この記事を書いた人

和田 慎(わだ しん)。機械設計歴8年。個人事業主として、主に自動車業界向けの専用機(専用装置)の設計を手がけています。現場で実際に使う計算や図面の知識を、新人の頃につまずいた経験をふまえて、できるだけわかりやすくまとめています。記事の数値や規格は目安であり、実際の設計・加工はJIS規格・メーカー資料・社内基準をご確認ください。

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