図面の三面図と投影法の読み方|第三角法・第一角法の違いを新人向けに解説

機械図面は、立体である部品の形状を平面の紙やモニター上へ正確に伝えるための「共通言語」です。その土台となるのが投影法であり、投影法を使って部品を複数の方向から表したものが三面図です。図面を読み始めたばかりの新人にとって、正面図・平面図・側面図がどう並び、どの向きから見た形なのかは最初のつまずきどころになります。さらに、日本の機械図面で標準的に使われる第三角法と、欧州などの海外図面で見かける第一角法では、図の配置が上下・左右で逆になります。ここを取り違えると、寸法の読み違いや加工ミスに直結します。この記事では、三面図と投影法の基本から、第三角法と第一角法の違い、図面を正しく読み解く手順までを、新人・若手の方に向けて順を追って整理します。まずは基本の考え方をつかみ、実際の図面で少しずつ目を慣らしていきましょう。

目次

図面の投影法とは

投影法とは、立体を平面上に正確に表すための図の描き方のルールです。立体をある方向から見て、その形を平らな面(投影面)へ写し取ると考えると分かりやすいでしょう。機械図面では、対象物を平行な視線でまっすぐ投影する「正投影(第三角法・第一角法)」が基本になります。斜めから立体的に見せる等角図(アイソメ図)やキャビネット図などもありますが、これらは全体像をつかむための補助であり、寸法や形状を正式に指示する主役はあくまで正投影による図です。

正投影では、対象物を「正面」「真上」「真横」といった決まった方向から見て、それぞれの形を別々の図として並べます。立体をいくつかの方向から見た図を組み合わせることで、一枚の平面の図面から部品の三次元的な形を再現できるようにしているわけです。1つの図だけでは奥行きや裏側の形が分かりませんが、複数の図を対応させて読むことで、穴の深さや段差、面の向きまで正確に伝えられます。

投影法を理解するうえで押さえておきたいのが、空間を仕切って考える「象限」という考え方です。互いに直交する2つの投影面で空間を4つの区画に分け、対象物を第三象限に置いて投影するのが第三角法、第一象限に置くのが第一角法です。名前の由来はここにあります。難しく感じるかもしれませんが、実務では「図がどこに並ぶか」という配置のルールとして覚えれば十分で、象限の理屈は背景知識として押さえておけば問題ありません。

三面図の基本

三面図とは、対象物を主に3つの方向から見て表した図の組み合わせで、正面図・平面図・側面図の3つを指します。正面図は、その部品の特徴が最もよく分かる方向から見た図で、三面図の基準になります。どの向きを正面にするかは、形状や機能、加工の基準面などを考えて決めます。基準となる正面図が決まると、他の図の向きも自動的に決まります。

平面図は対象物を真上から見た図で、正面図と上下に並べます。側面図は対象物を真横から見た図で、正面図の左右に並べます。ここで大切なのは、3つの図が互いに「対応」していることです。正面図と平面図は左右方向の寸法(幅)が一致し、正面図と側面図は上下方向の寸法(高さ)が一致します。ある図で見た穴や段差の位置は、真上・真横から見た別の図の同じ位置に必ず現れます。この対応関係を意識しながら図と図を見比べることが、三面図を読む基本動作です。

三面図は3つの図で表すのが基本ですが、対象物には表・裏・左・右・上・下の6つの面があり、必要に応じて背面図や下面図、左側面図を加えた「六面図」で表すこともあります。とはいえ、多くの部品は正面図・平面図・側面図の3つで形が十分に伝わるため、無駄な図は描かないのが原則です。また、平面図と側面図どうしの奥行き寸法は、45度の補助線を介して対応させると位置関係を確認しやすくなります。図と図の間には、こうした見えないつながりが常に存在していると意識しておきましょう。

第三角法とは

第三角法は、日本の機械図面で標準的に使われている投影法です。考え方はシンプルで、「見た方向にそのまま図を置く」と覚えると分かりやすいでしょう。対象物を真上から見た平面図は正面図の上に、右から見た右側面図は正面図の右に、左から見た左側面図は正面図の左に、下から見た下面図は正面図の下に配置します。つまり、見ている位置の側にその図を展開して並べるイメージです。

この「見た側に置く」というルールは直感的で、初めて図面に触れる人にも比較的なじみやすい方式です。日本国内の図面や北米の図面の多くは第三角法で描かれているため、まずは第三角法の配置をしっかり身につけることが実務の第一歩になります。JISでも正投影図として第三角法を基本とする旨が示されており、国内の設計・製造現場では第三角法が事実上の共通ルールになっています。

第一角法とは

第一角法は、主に欧州や一部の国々などで使われている投影法です。第三角法とは逆に、「対象物の向こう側に図を置く」と考えると理解しやすくなります。真上から見た平面図は正面図の下に、右から見た側面図は正面図の左に配置されます。見た方向とは反対側に図が来るため、第三角法に慣れた目には、配置がちょうど上下・左右で入れ替わって見えます。

日本国内で仕事をしている限り、日常的に触れる図面の多くは第三角法です。しかし、海外メーカーの部品図や輸入設備の図面、グローバルな取引先とやり取りする図面では、第一角法が使われていることがあります。配置のルールを取り違えると、右と左、上と下を逆に読んでしまい、加工や組み立てで重大なミスにつながります。海外図面を扱うときは、まずどちらの投影法かを確認する習慣が欠かせません。

第一角法と第三角法は、投影面に対して対象物と視点のどちら側から見るかが異なるだけで、表している立体そのものは同じです。したがって、どちらの図面でも読み取れる形状に違いはありません。問題になるのは、あくまで「図の並ぶ位置」です。慣れないうちは、正面図を中心に置き、平面図や側面図が上下左右のどこにあるかを一度紙にメモしてから読み進めると、取り違えを防ぎやすくなります。

第三角法と第一角法の違い

第三角法と第一角法は、図の並べ方の考え方が正反対です。どちらの投影法かを見分けるには、図の配置と、図面に描かれる投影記号(シンボル)を確認します。主な違いを次の表に整理します。

項目第三角法第一角法
平面図の位置正面図の上正面図の下
右から見た側面図正面図の右正面図の左
配置の考え方見た側に置く反対側に置く
主に使う地域日本・北米など欧州など
投影記号(同心円側)右側に配置左側に配置

投影記号は、切頭円錐(頭を切り落とした円すい)を2つの図で表したシンボルで、多くの場合は図面の表題欄の近くに描かれます。第三角法と第一角法では、この記号の並びが左右で反転します。ただし記号の描かれ方には細部の違いもあるため、判別に迷うときは、後述するJISの規格例と照らし合わせて確認するのが確実です。

なお、投影記号が省略されている図面もまれにあります。その場合は、既知の形状の部品や寸法の整合性から配置を推測することになりますが、判断に迷うときは推測で進めず、図面の発行元に投影法を確認するのが安全です。特に左右対称でない部品では、投影法を読み違えると、鏡像のように反転した形で加工してしまう恐れがあります。

図面を読む手順

三面図は、やみくもに眺めても頭に入りません。次のような手順で、順を追って読むと形をつかみやすくなります。

  • まず正面図を見て、部品のおおまかな形と大きさ、全体像をつかむ
  • 投影記号を確認し、第三角法か第一角法かを判断する
  • 平面図・側面図を正面図と対応させ、幅・高さ・奥行きを結び付ける
  • 隠れ線(破線)や中心線を手がかりに、穴や内部の形状を読み取る
  • 寸法や公差を合わせて確認し、加工に必要な情報を拾う

正面図だけで判断せず、必ず複数の図を行き来しながら読むことがポイントです。ある図で「この線は何を表しているのか」と迷ったら、対応する別の図の同じ位置を見ると、段差なのか穴なのか、面の向きなのかが分かることが多くあります。最初は時間がかかっても、対応関係を指でたどるように確認する癖をつけると、立体の形が頭の中で組み上がるようになります。

線の種類

図面を正しく読むには、線の種類とその意味を知っておく必要があります。同じ図の中でも、線の太さや形によって表している内容がまったく異なるためです。代表的な線の種類を次の表にまとめます。

線の種類線の形主な用途・意味
外形線太い実線見える部分の輪郭・エッジ
隠れ線(かくれ線)破線見えない部分の輪郭
中心線細い一点鎖線円や穴の中心、対称の軸
寸法線・引出線細い実線寸法の記入、注記の引き出し
想像線細い二点鎖線可動部の位置や隣接部品、加工前後の形状

このように、太い実線は見える輪郭、破線は隠れて見えない輪郭、一点鎖線は中心や対称軸を表します。線の種類を取り違えると、実在しない穴を読み取ったり、中心線を段差と勘違いしたりします。線の意味を意識するだけでも、読み間違いは大きく減らせます。細い線と太い線の使い分けは図面の読みやすさを左右するため、印刷や表示の状態が悪いときは、原図やデータで線の種類を確かめるようにします。

断面図・補助的な図

三面図だけでは表しきれない形状もあります。たとえば、内部に複雑な空間や段付きの穴がある部品では、隠れ線が増えすぎて読みにくくなります。そこで、対象物を仮想的に切断し、内部の形を実線で表す「断面図」が使われます。断面にはハッチング(斜めの細線)が入り、切った面であることが分かるようになっています。

断面図にもいくつか種類があります。対象物を端から端まで通して切る「全断面図」、対称な部品の半分だけを断面にする「半断面図」、切り口を回転させて表す「回転図示断面図」などです。どれを使うかは、内部形状をもっとも分かりやすく伝えられるかで選びます。断面図を読むときは、どの位置でどの向きに切ったのかを示す「切断線」と矢印を先に確認すると、断面が部品のどの部分を表しているのかを取り違えずに済みます。

このほか、小さく細かい部分を拡大して示す「部分拡大図」、特定の方向から見た形だけを示す「矢示図(やじるしず)」など、目的に応じた補助的な図も用いられます。これらは三面図を補い、より正確に形状や寸法を伝えるためのものです。それぞれ描き方や約束事があるため、詳しい使い方は別の記事であらためて解説します。ここでは「三面図以外にもこうした図がある」という点を押さえておけば十分です。

図面を正しく読むコツ

図面を正しく読むためのコツは、いくつかの基本動作を習慣にすることに尽きます。第一に、読み始める前に投影記号を確認し、第三角法か第一角法かをはっきりさせることです。特に海外図面では、この一手間が読み違いを防ぎます。第二に、常に複数の図の対応関係を意識することです。幅は正面図と平面図、高さは正面図と側面図というように、寸法のつながりを頭に置いて読み進めます。

加えて、図面の表題欄(タイトルブロック)に目を通す習慣も大切です。表題欄には、投影法の記号のほか、尺度(スケール)、材質、図面番号、改訂履歴などがまとまっています。尺度を見落とすと、図の見た目の大きさと実寸を混同してしまいます。図形を読み始める前に表題欄でこれらの前提情報を確認しておくと、図面全体を落ち着いて読み進められます。

第三に、線の種類と寸法・公差をセットで確認することです。形状が読めても、寸法や公差の意味が分からなければ図面を活かせません。寸法に付く公差の考え方ははめあい公差の使い分けで、形状や姿勢そのものの許容範囲を指示する方法は幾何公差の基礎で整理しています。あわせて、図面に記載される材料の指示を読み解くには機械材料の記号の読み方も参考になります。投影法・線・寸法・公差・材料をひとつながりで理解すると、図面から読み取れる情報が一気に増えます。

参考になる書籍

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使う上での注意

本記事は、三面図と投影法、第三角法・第一角法の違いを新人・若手の方が理解するための入門的な解説です。実際の製図や図面の解釈にあたっては、必ずJIS Z 8316(製図−図形の表し方の原則)やJIS B 0001(機械製図)などの製図規格の最新版を確認してください。線の種類や記号の細かな規定は規格に定められており、本記事の説明は要点を平易にまとめたものにとどまります。

また、投影法の選択や図面の描き方・読み方には、会社や取引先ごとの社内規格・慣習が加わることも珍しくありません。同じ第三角法でも、細部の運用が現場によって異なる場合があります。図面に疑問がある場合は自己判断で進めず、設計者や先輩、発注元へ確認することをおすすめします。本記事の内容の利用によって生じたいかなる損害についても、責任を負いかねます。

この記事を書いた人

和田 慎(わだ しん)。機械設計歴8年。個人事業主として、主に自動車業界向けの専用機(専用装置)の設計を手がけています。現場で実際に使う計算や図面の知識を、新人の頃につまずいた経験をふまえて、できるだけわかりやすくまとめています。記事の数値や規格は目安であり、実際の設計・加工はJIS規格・メーカー資料・社内基準をご確認ください。

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