キーとキー溝の基礎|平行キー・こう配キー・半月キーの種類と寸法を解説

機械の中で回転する歯車やプーリ、スプロケットは、軸に取り付けただけでは空回りしてしまい、動力を伝えることができません。軸と回転体を確実に結合し、トルク(回転力)を伝えるために使われる代表的な機械要素が「キー」です。キーは手のひらに載るほど小さな部品ですが、選び方や寸法・公差を誤ると、伝達不良やがたつき、異音、最悪の場合はキーの破損や軸そのものの損傷につながります。それだけに、機構設計の基礎として正しく理解しておきたい要素です。この記事では、機械設計をはじめたばかりの新人・若手の方に向けて、平行キー・こう配キー・半月キーといったキーの種類、寸法の決め方、キー溝の公差、そして強度の考え方までを、JIS規格をふまえて実務目線で順に整理していきます。

目次

キーとは

キー(key)とは、軸と、その軸に取り付ける歯車・プーリ・スプロケット・カップリングなどの回転体を固定し、回転(トルク)を伝えるための機械要素です。軸と回転体の両方に「キー溝(keyway)」と呼ばれる溝を加工し、そこへ角柱状または円弧状のキーをはめ込むことで、両者を回り止めします。これによって、軸の回転がそのまま回転体へ、あるいは回転体の回転が軸へと確実に伝わります。キーがなければ、軸と穴は滑って空転してしまい、動力を伝達できません。

キーの形状や寸法、はめあいはJIS B 1301(キー及びキー溝)に規定されています。標準化されているため、軸径さえ決まれば使用するキーの呼び寸法もおおむね一意に定まり、専用品を起こさずに市販のキー材を利用できるのが大きな利点です。設計者にとっては、選定の手間が少なく、加工やメンテナンスの現場でも部品を入手しやすいというメリットがあります。キーは、ねじ止めや締まりばめ、スプライン、セレーションなどと並ぶ、最も基本的な軸と回転体の結合方法のひとつと位置づけられます。中でもキー結合は、加工が比較的容易で、分解・再組立もしやすいことから、汎用機械で広く使われています。

キーの主な種類

キーにはいくつかの種類があり、伝えるトルクの大きさ、軸方向の位置決めの要否、組立・分解のしやすさ、回転数などによって使い分けます。実務でよく登場する代表的なものを整理すると、次のとおりです。

種類特徴用途の目安
平行キー断面が長方形で上下面が平行。こう配がなく最も一般的歯車・プーリ・カップリングなど一般的な動力伝達全般
こう配キー上面に1/100のこう配をもち打ち込んで固定。軸方向にも位置決め分解頻度が低く、抜け止めも兼ねたい箇所
半月キー(ウッドラフキー)円弧状(半月形)。深い溝に落とし込み傾きに追従小径軸・テーパ軸。工作機械や自動車部品など
その他(接線キー・角キー・丸キー等)大トルク用や簡易固定用などの特殊用途大型機械、試作・軽負荷の簡易結合

平行キーとこう配キーは、断面が四角い「角キー(サンクキー)」の仲間です。これに対して半月キーは円弧状という点で大きく異なります。このほか、大きなトルクを伝える大型機械には接線キーや二重キーが、軽い負荷の簡易的な固定には丸キーや角キーが使われることもあります。以下では、実務でよく使う三種類(平行キー・こう配キー・半月キー)を個別に見ていきます。

平行キー

平行キー(parallel key)は、上下面が平行な長方形断面をもつ、最も広く使われるキーです。キー自体にこう配がないため、軸溝と穴溝に「はめ込む」形で使用します。結合の仕方によって、回転体が軸方向に動ける「滑りキー(滑動形)」と、しっかり固定する「打込みキー(締込み形)」に大別されます。滑動形は、変速機のスライドギヤのように、軸に沿って部品を動かしながらトルクを伝えたい場合に用います。

形状の面では、キー端部の処理によって両角(角形)・両丸(丸形)・片丸の別があります。両丸・片丸はエンドミルで加工した袋溝(片端または両端が閉じた溝)に合わせやすく、両角は端まで抜けた通し溝に用いられます。呼び方は幅b×高さh×長さℓで表し、たとえば「平行キー 8×7×25」のように指定します。呼び寸法(幅×高さ)は後述のとおり軸径に応じて規格で決まり、長さℓは伝達トルクや相手部品のボス幅に合わせて選びます。平行キーは加工性・入手性・分解性のバランスがよく、まず第一候補として検討されることが多いキーです。

また、キーの材質には一般に機械構造用炭素鋼や、より強度を求める場合は合金鋼が用いられます。市販のキー材(キースチール)は、幅・高さが規格寸法に仕上げられた棒状で流通しており、必要な長さに切り出して使えるため、少量多品種の設計でも扱いやすいのが利点です。

なお、キー溝の加工は、軸側は転削(フライス)やスロッター、穴側はブローチ加工やスロッター加工で行うのが一般的です。加工方法によって溝の端部形状(通し溝か袋溝か)や仕上がり精度が変わるため、設計段階でどの工法を想定するかを意識しておくと、無理のない図面指示につながります。

こう配キー

こう配キー(taper key)は、上面に1/100のこう配(テーパ)をつけたキーで、軸溝と穴溝の間に打ち込んで固定します。こう配によってくさび効果が働き、キーが軸方向にも締まるため、回転方向のトルク伝達に加えて軸方向の抜け止めも兼ねられるのが特徴です。頭部につば(頭)を設けた「かぎ付きこう配キー(頭付きこう配キー)」もあり、狭い場所での抜き取りやメンテナンス性を重視する場合に使います。

一方で、打ち込みによって回転体が軸に対してわずかに偏心しやすく、高速回転では振れ(アンバランス)の原因になることがあります。また強く食い込むため分解しにくい面もあり、近年は分解性や回転精度の観点から平行キーが選ばれる場面が多くなっています。用途としては、分解頻度が低く、軸方向の固定も同時に行いたい箇所や、比較的低速で確実な固定が求められる箇所などが挙げられます。

半月キー(ウッドラフキー)

半月キー(woodruff key)は、円板を半分にしたような半月形(円弧状)のキーです。軸側に円弧状の深い溝を加工し、そこへキーを落とし込んで使います。キーが溝の中で傾きに追従して動けるため、テーパ軸や小径軸との相性がよく、組み付け時に自動調心的に収まりやすいのが利点です。溝を専用のカッター(ウッドラフカッター)で一度に加工できるため、加工が比較的容易な点も特徴です。

溝が深いぶん軸の断面欠損が大きく、強度的には大きなトルクには不向きですが、位置決めが容易で組立性がよいことから、工作機械の主軸まわりや自動車・農業機械の小径軸、産業機械の位置決め部などで多く使われます。キーが確実に溝へ収まり傾いて座るため、脱落しにくく、テーパ穴のボスとも馴染みやすいのが実務上のメリットです。

ウッドラフキーと平行キーのどちらを使うか迷ったときは、伝えるトルクの大きさと軸径がひとつの判断材料になります。小径で高いトルクを求めないなら半月キー、ある程度のトルクをしっかり伝えたいなら平行キー、というのが実務でのおおまかな使い分けの感覚です。

キーの寸法の決め方

平行キーやこう配キーの呼び寸法(幅b×高さh)は、原則として「軸径d」に応じてJIS B 1301で決まっています。つまり設計者が幅や高さを自由に決めるのではなく、軸径から表を引いて選ぶのが基本です。幅と高さが自動的に決まる一方で、長さℓだけは伝達トルクや相手部品のボス幅に合わせて設計者が選定します。代表的な対応関係の目安を示します。

軸径 d (mm)キーの呼び b×h (mm)
6を超え8以下2×2
8を超え10以下3×3
10を超え12以下4×4
12を超え17以下5×5
17を超え22以下6×6
22を超え30以下8×7
30を超え38以下10×8
38を超え44以下12×8
44を超え50以下14×9
50を超え58以下16×10
58を超え65以下18×11
65を超え75以下20×12

※上表は理解のための目安です。実際の値は必ず最新のJIS B 1301で確認してください。このように軸径が決まればキー幅・キー高さはほぼ自動的に定まります。長さℓは、一般に相手部品のボス幅と同じか少し短めを目安とし、伝達トルクが大きい場合は長くして負担を分散させます。逆に言えば、キー溝の幅や深さの図面指示も、この呼び寸法を出発点として決めていくことになります。まずは軸径から呼び寸法を引く、という流れを身につけておくとよいでしょう。

キー溝の寸法と公差

キー溝は、軸側(軸溝)と回転体側(穴溝/ハブ溝)の両方に加工します。溝幅bはキー幅と同じ呼び寸法で指示し、はめあいの強さ(きつさ・ゆるさ)は幅の公差で調整します。JIS B 1301では、結合の種類に応じて次のような幅公差の組み合わせが規定されています。図面では、この公差記号を溝幅の寸法に添えて指示します。

結合の種類軸溝幅の公差穴溝幅の公差キーの状態
滑動形H9D10軸方向に動ける
普通形N9JS9一般的な固定
締込み形P9P9強く固定する

加工精度としては普通級・精級といった区分もあり、要求される精度に応じて選びます。溝の深さは、軸溝深さt1、穴溝深さt2として、それぞれ軸径を基準に規定値が定められています。図面では深さの表し方(軸中心からの寸法か、溝底からの寸法か)を取り違えないよう注意が必要です。キーとキー溝のはめあいは、軸と穴のはめあい公差とまったく同じ考え方で理解できます。はめあいの選び方や公差記号の意味については、はめあい公差の使い分けはめあい公差検索ツールもあわせて参考にしてください。

はめあいがゆるすぎると、正逆転の切り替え時にがたついて打音や摩耗を招き、逆にきつすぎると組立性が悪化したり、内部応力が残ったりします。用途に合った結合の種類を選び、その公差を図面へ正しく反映することが、キー結合を長持ちさせるうえでの要点になります。

キーの強度の考え方

キーは主に「せん断」と「面圧(つぶれ)」の二つのモードで検討します。せん断は、キーの幅bと長さℓでできる断面が、伝達トルクによって生じるせん断力に耐えられるかを見るものです。トルクを軸半径で割った接線力が、この断面を切ろうとする力として働きます。面圧は、キー側面と溝側面が接触する面が、同じ力を受けてつぶれ(圧壊)ないかを確認するもので、接触高さと長さで受ける面積に対して力が分布します。

一般に、キーの材料は軸よりわずかに軟らかいものを選び、過大な負荷がかかったときには軸や回転体ではなくキーが先に壊れるようにしておく、という考え方がとられることもあります。これは、比較的交換しやすいキーを「安全弁」として機能させ、高価な軸やハブを守る狙いによるものです。

伝達トルクが大きい場合は、キーを長くする、あるいは2本のキーを120度または180度に配置して分担させるなどの方法で対応します。ただしキー溝を設けること自体が軸の断面を減らし、軸のねじり強度を下げる点にも注意が必要です。キーや軸の材料には機械構造用炭素鋼(S45Cなど)が用いられることが多く、材料記号や強度の目安は鉄鋼材料の種類も参考になります。具体的な数値検討は専用の計算に譲りますが、まずは「せん断と面圧の両方を確認する」という考え方をしっかり押さえておきましょう。

キー・キー溝の設計・加工の注意点

キー溝は応力集中の起点になりやすい部分です。特に溝底の隅は、角のままだと応力が集中しやすく、疲労破壊の起点になりかねないため、規格で定められた範囲で隅にR(すみR)を付けるのが基本です。溝の存在によって軸のねじり強度が低下することもふまえ、必要に応じて軸径に余裕をもたせるとよいでしょう。特に繰り返し荷重や衝撃荷重がかかる用途では、この点の配慮が寿命を大きく左右します。

また、キーの脱落防止も実務では重要です。平行キーでは止めねじでキーを軸に固定したり、袋溝(片端が閉じた溝)を用いて軸方向の移動を規制したりします。回り止めとしての機能を確実にするため、キーと溝のはめあい、面取り、バリの除去にも気を配ります。組立時には、キーが斜めに入っていないか、確実に溝底まで収まっているか、溝とキーの間に過大なすき間がないかといった点を確認することが欠かせません。こうした小さな確認の積み重ねが、伝達不良やがたつきを防ぐことにつながります。

参考になる書籍

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使う上での注意(免責)

本記事で示した寸法・公差・対応表は、あくまで理解のための目安であり、実際の設計・製作にあたっては必ず最新のJIS B 1301(キー及びキー溝)などの一次情報を確認してください。キーの選定は、伝達トルク・回転数・使用環境・相手部品の材質・荷重の性質(一定か変動か、衝撃の有無)など多くの条件に左右されます。数値の適用範囲や許容差は規格改正で変わることもあります。重要保安部品や高負荷部位では、専門家によるレビューや実機での検証を行ったうえで採用してください。本記事の内容の利用によって生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いかねます。

この記事を書いた人

和田 慎(わだ しん)。機械設計歴8年。個人事業主として、主に自動車業界向けの専用機(専用装置)の設計を手がけています。現場で実際に使う計算や図面の知識を、新人の頃につまずいた経験をふまえて、できるだけわかりやすくまとめています。記事の数値や規格は目安であり、実際の設計・加工はJIS規格・メーカー資料・社内基準をご確認ください。

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