機械設計でよく使う単位換算|力・応力・圧力・トルクの単位をまとめて解説

機械設計や製造の現場では、SI単位(N、Pa、N·mなど)と、古くから使われてきた重力単位(工学単位:kgf、kgf/cm²など)がいまも混在しています。CADや構造解析ソフトはSI系でも、手元の古い図面やメーカーカタログ、ベテランのノウハウはkgf系という場面は珍しくありません。だからこそ、両者を素早く行き来できる単位換算の力が、実務では欠かせません。単位換算の基本を押さえておくと、桁違いのミスや、力と質量の取り違えといった致命的なミスを未然に防げます。

この記事では、力・応力・圧力・トルク・仕事・動力といった、機械設計で頻繁に使う単位の換算を、換算表とあわせてまとめて解説します。新人〜若手の実務者が、図面や計算で迷ったときに立ち返れる早見表として使ってください。まずは全体像として、SIと重力単位の関係から確認していきましょう。

目次

SI単位と重力単位(工学単位)

単位系はおおまかに、現在の国際標準であるSI単位(国際単位系)と、それ以前に広く使われた重力単位(工学単位)の2つに分けられます。SI単位では、力をN(ニュートン)、圧力・応力をPa(パスカル)やMPa、トルクをN·mで表します。一方の重力単位では、力をkgf(重量キログラム、単にkgと書かれることも多い)、応力をkgf/mm²やkgf/cm²、トルクをkgf·mで表します。JISも現在はSI単位を基本としているため、新規の図面や計算書はSIでそろえるのが原則です。

両者をつなぐ基本が、標準重力加速度 g ≒ 9.8 m/s²(正確には9.80665 m/s²)です。質量1kgの物体にはたらく重力が1kgfなので、1kgf ≒ 9.8N となります。実務では概算として g=9.8 を使い、1kgf ≒ 9.8N、逆に 1N ≒ 0.102kgf と覚えておくと、大半の換算に対応できます。

ここで注意したいのは、kg(質量)とkgf(力)は本来まったく別の量だということです。質量は物体そのものの量で場所によらず一定ですが、力(重量)は重力加速度に左右されます。古い図面で「荷重100kg」と書かれていれば、それは力としての100kgf、すなわち約980Nを指しているのが一般的です。SIで計算するときは、この「kg」を必ずNに直してから式に入れる習慣をつけておくと安全です。

力の単位(N・kN・kgf)

力のSI単位はN(ニュートン)です。1Nは、質量1kgの物体に1m/s²の加速度を生じさせる力と定義されます。大きな力を扱うときはkN(キロニュートン、1kN=1000N)を使います。荷重や反力、ばね力、切削抵抗など、機械設計で「力」を扱う場面はきわめて多く、まずこのNとkgfの関係を体に入れておくことが基本になります。重力単位のkgfとの関係は次のとおりです。

換算目安(g=9.8)正確値(g=9.80665)
1 kgf≒ 9.8 N= 9.80665 N
1 N≒ 0.102 kgf= 0.101972 kgf
1 kN≒ 102 kgf= 101.972 kgf
1 tf(トンf)≒ 9.8 kN= 9.80665 kN
力の単位換算(kgf ⇔ N)

実務では「kgfをNにするには約10倍、NをkgfにするにはおよそN÷10」と大づかみに覚えておくと、桁の見当をつけるのに便利です。たとえば「50kgfくらいの力」と言われたら、ざっと500N弱と即座にイメージできます。ただし正式な計算や強度検証では、10倍で丸めず9.8(または9.80665)を使い、誤差が問題にならないようにします。

応力・圧力の単位(Pa・MPa・N/mm²・kgf/mm²・kgf/cm²)

応力と圧力は「単位面積あたりの力」で、SI単位はPa(パスカル、=N/m²)です。ただしPaは小さすぎるため、機械設計では 10⁶Pa にあたるMPa(メガパスカル)を使うのが一般的です。ここで最も重要な関係が 1MPa = 1N/mm² です。この2つは呼び方が違うだけで、まったく同じ大きさを表します。材料の引張強さや降伏点がN/mm²で書かれていても、MPaと読み替えてそのまま使えます。

換算目安備考
1 MPa= 1 N/mm²まったく同じ大きさ
1 kgf/mm²≒ 9.8 MPa=9.8 N/mm²
1 kgf/cm²≒ 0.098 MPa≒0.1 MPa
1 MPa≒ 10.2 kgf/cm²圧力でよく使う
1 気圧(atm)≒ 0.101 MPa≒0.1 MPa
1 bar= 0.1 MPa=100 kPa
応力・圧力の単位換算

圧力の分野では、1気圧 ≒ 0.1MPa、1bar = 0.1MPa という関係も覚えておくと、空気圧・油圧の機器仕様を読むときに役立ちます。たとえば「油圧7MPa」は約70kgf/cm²にあたり、旧単位のカタログとも突き合わせやすくなります。なお、面積の単位に cm² と mm² が混在すると桁を1桁(正確には10²=100倍)間違えやすいので、応力計算では面積をmm²、力をNにそろえて N/mm²(=MPa)で計算するのが安全です。単位をそろえてしまえば、換算そのものを省けてミスも減ります。

トルク(モーメント)の単位(N·m・N·cm・kgf·m・kgf·cm)

トルク(回転させる力のモーメント)は「力 × 腕の長さ」で、SI単位はN·m(ニュートンメートル)です。ボルトの締付トルクやモータの出力トルク、減速機の伝達トルクなどで頻繁に登場します。重力単位ではkgf·mやkgf·cmが使われてきました。換算は力と同じ 1kgf ≒ 9.8N の関係がそのまま効き、腕の長さの単位(mかcmか)にも注意が必要です。

換算目安
1 kgf·m≒ 9.8 N·m
1 N·m≒ 0.102 kgf·m ≒ 10.2 kgf·cm
1 kgf·cm≒ 0.098 N·m ≒ 9.8 N·cm
1 N·m= 100 N·cm
トルクの単位換算

締付トルクの指定は、現場でもとくに単位の取り違えが起きやすい部分です。「トルク200」とだけ書かれていても、N·mなのかkgf·cmなのかで約100倍も違ってしまい、ボルトの破断や締付不足に直結します。締付トルクの具体的な決め方や、強度区分(4.6や8.8)との関係は、ボルトの締付トルクの決め方で詳しく解説しています。あわせて確認してください。

長さ・面積・体積(mm・inch)

長さのSI単位はm(メートル)ですが、機械設計では実務上mm(ミリメートル)を基本単位として扱います。海外製の部品や配管、工具では、いまもインチ(inch)表記が多く残っています。1inch = 25.4mm はきっちり覚えておきましょう。面積は長さの2乗なので換算係数も2乗(例:1cm² = 100mm²)、体積は3乗(1cm³ = 1000mm³、1L = 1000cm³)になる点に注意します。

この「2乗・3乗で係数が効く」性質を忘れると、面積や体積で桁を大きく外してしまいます。cm→mmの長さは10倍でも、面積は100倍、体積は1000倍です。インチとミリの相互換算は、分数インチ対応のインチ⇔ミリ換算ツールを使うと、早見表つきで手早く確認できます。

仕事・動力の単位(J・W・kW・PS)

仕事・エネルギーのSI単位はJ(ジュール、=N·m)、動力(仕事率)のSI単位はW(ワット、=J/s)です。モータの出力はW・kW(1kW=1000W)で表しますが、古い機械やエンジンではPS(馬力)が使われます。1PS ≒ 735.5W(仏馬力)で、およそ0.74kWです。逆に1kW ≒ 1.36PSと覚えておくと、モータ選定やエンジン仕様の比較にすぐ使えます。

換算目安
1 PS(仏馬力)≒ 735.5 W ≒ 0.74 kW
1 kW≒ 1.36 PS
1 J= 1 N·m = 1 W·s
1 kW·h= 3.6 MJ
仕事・動力の単位換算

動力は「トルク × 回転数」とも結びつきます。おおまかには、動力P[kW]・トルクT[N·m]・回転数N[min⁻¹]の間に P ≒ T × N ÷ 9550 の関係があり、モータのトルクと回転数から必要動力を見積もる際に便利です。単位を混ぜるとこの係数がずれるため、Nはmin⁻¹(rpm)、トルクはN·mにそろえて使います。

単位換算の実務例

実際の現場で出会う換算を、いくつか具体例で見てみましょう。数値の感覚をつかんでおくと、図面やカタログを読むスピードが上がり、値の妥当性チェックもしやすくなります。

  • 引張強さ「400N/mm²」の材料 → 400MPaと同じ。kgf/mm²では約41kgf/mm²(400 ÷ 9.8)。
  • 締付トルク「20N·m」 → kgf·mでは約2.0kgf·m(20 ÷ 9.8)、kgf·cmでは約204kgf·cm。
  • 荷重「500kg(500kgf)」 → 約4900N ≒ 4.9kN。
  • 油圧「7MPa」 → 約70kgf/cm² ≒ 約69気圧。
  • モータ出力「2.2kW」 → 約3.0PS。
  • ばね力「10kgf」 → 約98N ≒ 約0.1kN。

強度検証の場面では、こうした換算を踏まえたうえで許容荷重や締付トルクを確認します。数値を素早く求めたいときは、ボルト強度計算ツールのような計算ツールを併用すると、手計算の単位換算ミスも減らせます。

換算でミスしやすいポイント

単位換算で起きやすいミスには、いくつか定番のパターンがあります。事前に知っておくだけで、多くのトラブルを防げます。

  • MPaとN/mm²を別物だと思う:この2つは完全に同じ大きさ。1MPa=1N/mm²です。
  • cm²とmm²の桁ミス:1cm²=100mm²。面積が2乗のぶん、応力や圧力で桁を間違えやすい。
  • kgfとNの取り違え:約9.8倍の差。単純に「10倍/10分の1」で済ませると誤差が出るうえ、掛け忘れると桁がまるごとずれます。
  • kg(質量)とkgf(力)の混同:荷重表記のkgは通常kgfのこと。SI計算ではNに直してから使う。
  • 単位の不統一:一つの計算式の中で単位系を混ぜない。力はN、長さはmm、応力はN/mm²にそろえるのが基本。

基本の対策はシンプルで、「計算に入る前に、すべての量を一つの単位系にそろえる」ことです。SIで統一しておけば、途中の換算が減り、結果として検算も楽になります。

なぜSIと重力単位が混在するのか

日本の製造業では長らく重力単位(工学単位)が使われてきました。1999年の計量法改正でSI単位への統一が進み、現在の新規図面や規格はSIが基本です。しかし、既存の設備図面や治工具、社内の標準資料、ベテランの経験則にはkgf系の数値が数多く残っています。つまり、新旧が併存するのは過渡期ゆえの必然であり、当面はどちらの単位も読めることが実務者に求められます。片方だけしか扱えないと、図面の読み違いや、新旧の値を突き合わせるときのミスにつながります。

だからこそ、本記事で示した「1kgf ≒ 9.8N」「1MPa = 1N/mm²」「1kgf/mm² ≒ 9.8MPa」といった基本の換算を、身体感覚として持っておくことが近道です。数字を見た瞬間に、もう一方の単位でのおおよその大きさが浮かぶようになれば、図面レビューや他部署とのやり取りが格段にスムーズになります。

換算に慣れるコツは、実際の設計値を両方の単位で書き出してみることです。たとえば手元の図面にある材料強度や締付トルクを、SIと重力単位の両方でメモしておくと、次に同じ値を見たときにすぐ大きさをイメージできます。数をこなすほど、桁のずれや単位の取り違えに「なんとなく違和感」を覚えられるようになり、それが最後の砦としてミスを止めてくれます。

主要な換算のまとめ早見

最後に、機械設計でとくに使用頻度の高い換算を一覧にまとめます。迷ったときはまずここを確認してください。いずれも g=9.8 での概算値です。

覚えておきたい換算
1 kgf ≒ 9.8 N、1 N ≒ 0.102 kgf
応力1 MPa = 1 N/mm²、1 kgf/mm² ≒ 9.8 MPa
圧力1 MPa ≒ 10.2 kgf/cm²、1 気圧 ≒ 0.1 MPa
トルク1 kgf·m ≒ 9.8 N·m
長さ1 inch = 25.4 mm
動力1 PS ≒ 735.5 W ≒ 0.74 kW
機械設計でよく使う単位換算の早見

この早見表をベースに、必要に応じて有効数字を上げたり、正確値(g=9.80665)で計算し直したりすれば、日々の設計業務のほとんどをカバーできます。単位は設計の共通言語です。換算に強くなることは、そのまま計算ミスの少ない設計者への近道になります。

参考になる書籍

(PR)機械設計の基礎から実務まで、一冊手元に置いておくと役立つ定番のリファレンスです。

使う上での注意(免責)

本記事の換算値は、実務での見当づけを目的とした概算の目安です。多くの数値は重力加速度 g=9.8 m/s² を用いて丸めています。正式な設計計算や強度検証、公的な書類に用いる際は、有効数字に注意し、必要に応じてSIの標準値 g=9.80665 m/s² を使って計算し直してください。単位の定義や換算係数はJISおよび計量法に基づく正式な値を確認し、最終的な判断は各自の責任で行ってください。本記事の内容の利用によって生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いかねます。

この記事を書いた人

和田 慎(わだ しん)。機械設計歴8年。個人事業主として、主に自動車業界向けの専用機(専用装置)の設計を手がけています。現場で実際に使う計算や図面の知識を、新人の頃につまずいた経験をふまえて、できるだけわかりやすくまとめています。記事の数値や規格は目安であり、実際の設計・加工はJIS規格・メーカー資料・社内基準をご確認ください。

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