座金(ワッシャー)の種類と使い方|平座金・スプリングワッシャー・特殊座金を解説

座金(ワッシャー)は、ボルトの頭やナットと被締結材のあいだに挟み込む、中央に穴の空いた薄い部品です。単体では目立ちませんが、座面を傷や陥没から守り、面圧を広い範囲に分散し、種類によっては振動による緩みを抑える役割も担います。適切な座金を選べば締結の信頼性が高まり、逆に選び方を誤ると緩みや座面のめり込みといったトラブルの原因にもなります。本記事では、平座金・スプリングワッシャー・歯付き座金など代表的な種類ごとの特徴と使い方、材質や選定のポイントを、新人・若手の設計者向けに実務目線で整理します。

目次

座金(ワッシャー)とは

座金とは、ボルトの頭部やナットの座面と、締め付けられる部品(被締結材)とのあいだに入れる薄い円板状の部品の総称です。英語ではワッシャー(washer)と呼び、図面や部品表でも両方の呼称が使われます。形は単純ですが、締結部の中で複数の重要な働きを兼ねています。

締結部では、ボルトを締め付けて生じた軸力が、座面を通じて被締結材へ伝わります。このとき座面の面積が小さかったり、材料が軟らかかったりすると、局所的に大きな面圧が生じて部品がへこみ、締め付けた力(軸力)が時間とともに抜けてしまいます。座金はこの力の受け渡しを仲立ちして締結を安定させる部品だと考えると、その役割が理解しやすくなります。

座金の主な働きは、大きく次の4つに整理できます。第一に座面の保護で、ボルトを締め付けたときに部品表面へ生じる傷や陥没を防ぎます。第二に面圧の分散で、座面あたりにかかる荷重を広い面積へ逃がします。第三に緩み止めで、ばね性や食い込みによって振動による戻りを抑えます。第四にすきま調整で、部品間のわずかな高さやすき間を埋める用途に使われます。どの働きを狙うかによって、選ぶべき座金の種類は変わってきます。

逆に、座金を使わなければならない場面を知っておくと判断が速くなります。被締結材が軟らかい、取付穴が大きい・長穴である、座面に塗装や仕上げがあって傷を避けたい、振動環境で緩みが心配、といった条件がそろうほど座金の必要性は高まります。反対に、十分に硬い金属どうしを標準的な穴で締結する場合は、必ずしも座金が要らないこともあります。

座金の主な役割

座金に期待する役割を最初に明確にしておくと、種類の選定がぶれません。代表的な役割と、それに向く座金を次の表に整理します。

役割主な効果向いている座金・使いどころ
座面の保護締付時の傷や陥没を防ぐ平座金(一般的な締結全般)
面圧の分散座面あたりの荷重を広い面積へ下げる大形・特大形の平座金(軟材・長穴)
緩み止め振動による戻りを抑えるスプリングワッシャー・歯付き座金
すきま調整・高さ調整部品間のすき間や高さを微調整する平座金の重ね使い(最小限に)

なお、座金は「あれば安心」という理由だけで付けるものではありません。役割のない座金は、部品点数を増やし、締結のばらつき要因を増やすだけになりかねません。上の表で狙いを確認し、必要なものを必要なだけ使う意識をもちましょう。実務では役割が重なることも多く、たとえば軟らかいアルミ部品を鋼ボルトで締める場合、面圧分散と座面保護の両方を狙って大形の平座金を選ぶ、といった判断になります。

面圧の分散は、特に薄板や軟らかい材料を締結するときに効いてきます。ボルト頭の小さな座面が直接あたると、その周囲だけがへこんで座面が沈み、時間の経過とともに軸力が低下します。座金で接触面積を広げれば、単位面積あたりの荷重(面圧)が下がり、へこみと軸力低下を抑えられます。長穴やバカ穴のように穴径が大きい部材では、平座金がないとボルト頭が穴へ落ち込んでしまうため、平座金は事実上必須です。

平座金(並形・大形・特大形)

平座金(ひらざがね)は、もっとも一般的な座金です。平らな円板で、座面の保護と面圧の分散を主な目的とします。ボルトの取付穴が大きい部材や、アルミ・樹脂・木材のように軟らかく陥没しやすい材料に対して特に有効です。長穴(ルーズホール)を使う場合も、穴からボルト頭がめり込んだり抜けたりしないよう平座金を併用します。

平座金には外径の大きさによっていくつかの形があり、JISでは並形・大形・特大形などが規定されています。外径が大きいほど座面の接触面積が広がり、面圧をより下げられます。標準的な締結には並形を、座面が不足する場合や軟材には大形・特大形を選ぶのが基本です。次の表に目安を示します。

種類外径の目安主な用途
並形標準的な外径一般的な鋼部品の締結
大形並形より大きい座面が不足する箇所・やや軟らかい材料
特大形さらに大きい長穴・木材・樹脂など面圧を特に下げたい箇所

平座金を選ぶときは、外径だけでなく内径と厚さも確認します。内径はボルトの呼び径に合わせ、大きすぎると座面が偏り、小さすぎると入りません。厚さは面圧を受ける強さに関わり、薄すぎる座金を高面圧の箇所に使うと座金自体が変形します。また、打ち抜きで作られた平座金にはわずかなバリ(だれ・かえり)が出る面があり、精密な締結ではかえりの向きに配慮する場合もあります。

なお、ボルトやナットには座面をあらかじめ広げた「フランジ付き(つば付き)」の製品もあります。これらは座金の機能を頭部に組み込んだもので、部品点数を減らしつつ面圧分散や回り止めを図れます。座金を使うか、フランジ付き部品を使うかは、面圧・作業性・コストを見て判断します。

スプリングワッシャー(ばね座金)

スプリングワッシャー(ばね座金)は、円周の一箇所に切り口(合口)を設けてばね性をもたせた座金です。緩み止めを目的として古くから広く使われており、市販のボルトセットにも定番として付属しています。締め付けると座金が押しつぶされてほぼ平らになり、そのばね反力とめくれ上がった切り口の角がナットの戻りに抵抗する、と一般に説明されます。

JISではばね座金にいくつかの種類(一般用の2号、重荷重用の3号など)が規定されています。用途に応じて断面の大きさが異なり、より大きなばね力が必要な箇所には断面の大きいものを使います。

ただし、スプリングワッシャーの緩み止め効果については諸説あります。強く締め付けた高張力ボルトでは十分な効果が得られない、あるいは座面を傷つけるといった指摘もあり、過信は禁物です。実際、自動車や精密機器の分野では、より確実な緩み止めを求めてスプリングワッシャーを使わず、緩み止め剤や専用座金、適正な軸力管理そのもので対応する例も増えています。重要な締結では、他の手段と比較して選ぶのが現実的です。緩み止めの考え方についてはねじの緩みと緩み止めの方法もあわせて参照してください。

歯付き座金(外歯・内歯)

歯付き座金は、外周または内周にぎざぎざの歯(つめ)をもつ座金です。締め付けると歯が座面やナットに食い込み、回り止め・戻り止めとして働きます。歯が外周にある外歯形は接触部が広く回り止め効果が高め、歯が内周にある内歯形は歯が外から見えにくく外観を損ないにくいという特徴があります。

歯付き座金には、外歯形・内歯形のほかに、皿形(座金自体を皿状にして歯を付けたもの)や、内外両方に歯をもつタイプもあります。いずれも歯の食い込みで戻り止めを図る点は共通で、薄い板ばね材で作られており、比較的小さな締結や電気接点まわりで重宝します。

歯付き座金は、金属どうしを電気的につなぐ用途にも使われます。塗装やめっきの皮膜を歯が突き破って導通を確保するため、アースの確実化などに利用されます。一方で、歯が座面に傷を付けるため、塗装面や仕上げ面、腐食を嫌う箇所には不向きな場合があります。用途に応じた使い分けが必要です。

特殊な座金

上記のほかにも、目的に応じたさまざまな座金があります。皿ばね座金(皿ばねワッシャー)は、皿状に成形して高いばね荷重を得られるもので、熱膨張や振動のある締結で軸力の変動を吸収する用途に使われます。つば付き座金は片側につばを立てて位置決めや保護を兼ねるもの、面取り座金は面取り部や角穴に合わせた形状のものです。

また、波打った形状で軽いばね力を与える波形座金(ウェーブワッシャー)は、がたつき防止や部品の与圧に使われます。高張力ボルト(ハイテンボルト)用には、専用のゆるみ止め座金がセットで用意されている製品もあります。これらは所定の締結条件で使うことを前提に設計されているため、メーカーの指定する組み合わせや向きを守って使うことが大切です。特殊座金は種類が多いため、「効果がありそうだから」と安易に流用せず、狙いと使用条件をカタログで確認してから採用します。

座金を使うときの注意点

座金は正しく使ってはじめて効果を発揮します。まず向きに注意します。スプリングワッシャーは切り口(合口)の向きに指定がある場合があり、めくれ上がった側が締結を戻す方向へ抵抗するように組みます。歯付き座金も、歯が食い込む面を意識して配置します。

次に、座金を重ねすぎないことです。座金を何枚も重ねると、締め付けたときに座金どうしがずれて軸力が安定せず、かえって緩みやすくなります。高さ調整で複数枚使うのはやむを得ない場合に限り、基本は最小限にとどめます。緩み止めはあくまで補助であり、適正な軸力で締め付けること(正しい締付トルク管理)が土台です。締付トルクの考え方はボルトの締付トルクの決め方を参照してください。

さらに、座金の材質と強度区分にも注意が必要です。高い面圧がかかる箇所に軟らかい座金を使うと座金自体が陥没し、軸力が抜けてしまいます。相手より極端に硬い座金は被締結材にめり込み傷を残し、逆に軟らかすぎる座金はつぶれます。広い座面が必要なときは、無理に薄い座金を重ねるのではなく、大形・特大形の平座金や、必要な強度をもつ座金を選びます。

座金の材質と選び方

座金の材質は、被締結材やボルトの条件に合わせて選びます。一般的な鋼構造には、安価で強度を確保しやすい鉄(表面にめっきを施したもの)が広く使われます。屋外や水回りなど腐食が問題になる箇所ではステンレスを選びます。高い面圧がかかる高張力ボルトには、強度区分に対応した硬い座金を用います。

材質特徴使いどころ
鉄(めっき品)安価で強度を確保しやすい一般的な鋼構造・屋内
ステンレス(SUS304など)耐食性が高い屋外・水回り・薬品環境
高強度・強度区分対応品高い面圧に耐える高張力ボルトの締結

座金の硬さや表面処理も選定の要素です。高面圧がかかる箇所では焼入れなどで硬さを高めた座金を使い、腐食環境ではめっきの種類(三価クロメート、亜鉛めっきなど)やステンレスの選択が寿命を左右します。見た目が同じ座金でも、材質と処理によって使える条件は大きく変わる点に注意しましょう。

材質を選ぶ際は、被締結材やボルトとの相性にも注意します。異なる金属を接触させると、湿気のある環境で電食(異種金属接触腐食)が進むことがあります。ステンレスボルトに鉄座金を組み合わせるといった場合は環境を確認しましょう。材質記号の読み方は機械材料の記号の読み方、ボルト側の見方はボルトの強度区分の見方がそれぞれ参考になります。

座金選定のポイント

座金を選ぶときは、次の3点を押さえると迷いにくくなります。第一に、その座金に何を期待するのか(座面保護なのか、面圧分散なのか、緩み止めなのか)を明確にすることです。役割があいまいなまま「とりあえず付ける」と、効果の薄い使い方になりがちです。

  • 役割を明確にする:保護・分散・緩み止め・調整のどれを狙うのかを先に決める
  • ボルトサイズに合わせる:呼び径に対応した内径・外径・厚さの座金を選ぶ
  • 過剰に使わない:重ね使いや不要な緩み止めは避け、締結を単純に保つ

特に「過剰に使わない」ことは実務で見落とされがちです。座金は増やすほど信頼性が上がる部品ではありません。狙いに合ったものを一枚、適切に使うことが基本です。あわせて、標準品として入手しやすい座金を選ぶことも重要です。特殊な寸法や材質にこだわると調達に時間がかかりコストも上がるため、まずはJISやメーカーの標準ラインアップから、役割とサイズに合うものを選ぶのが基本方針になります。

座金は小さく安価な部品ですが、締結の信頼性を左右する要所です。図面に座金を指示するときは、種類・呼び径・材質・表面処理まで明記し、現場で迷いが生じないようにしておくと、組立品質のばらつきを減らせます。

締付作業に役立つ工具

(PR)規定トルクでの締め付けには、校正されたトルクレンチの使用が推奨されます。

使う上での注意

本記事で示した寸法や区分、緩み止め効果などはあくまで一般的な目安であり、製品や規格改定によって異なる場合があります。座金の正式な形状・寸法・機械的性質は、JIS B 1256(平座金)をはじめとする該当規格や、使用するメーカーのカタログ・技術資料で必ず確認してください。特に緩み止めや高い面圧がかかる重要締結では、実際の使用条件での確認・試験を行い、最終的な採用可否は設計者・実務者の責任において判断してください。本記事の内容の利用によって生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いません。

この記事を書いた人

和田 慎(わだ しん)。機械設計歴8年。個人事業主として、主に自動車業界向けの専用機(専用装置)の設計を手がけています。現場で実際に使う計算や図面の知識を、新人の頃につまずいた経験をふまえて、できるだけわかりやすくまとめています。記事の数値や規格は目安であり、実際の設計・加工はJIS規格・メーカー資料・社内基準をご確認ください。

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