表面粗さの図面記号の見方|Ra・Rzの意味と新JIS記号の読み方を解説

機械部品の図面を読み解くうえで、寸法や公差と並んで欠かせないのが「表面粗さ(表面性状)」の指示です。同じ形状・同じ寸法の部品でも、表面がツルツルなのかザラザラなのかによって、シール性・しゅう動性・疲労強度・見た目といった機能は大きく変わります。ところが表面粗さの図面記号は、Ra・Rzといったパラメータの意味、新JISのV字記号の各位置、そして現場にいまも残る旧JISの三角記号(▽)など、覚えることが多く、新人のうちはつまずきやすいポイントです。

この記事では、表面粗さの基本パラメータの意味から、新JIS・旧JISの図示記号の読み方・書き方までを、実務目線で整理します。図面を「読む」ときにも「書く」ときにも役立つよう、記号の各位置が何を表しているのかを一つずつ確認していきましょう。なお、Ra⇔Rzのように数値どうしの目安換算が必要な場合は、表面粗さ換算ツールもあわせて活用してください。

目次

表面粗さとは

表面粗さとは、加工によってできる表面の細かい凹凸のことです。旋削・フライス・研削といった加工では、工具の刃先やといしの通った跡が、ミクロな山と谷となって表面に残ります。この凹凸の大きさを数値化したものが表面粗さで、現在のJISでは「表面性状」という大きな枠組みのなかで規定されています。

表面粗さは、単なる見た目の良し悪しの問題ではありません。表面の状態は、部品が果たすべき機能に直接影響します。代表的なものを挙げると次のとおりです。

  • シール性:Oリングやガスケットが当たる面が粗いと、微小なすき間から漏れが生じやすくなります。
  • しゅう動性:軸と軸受のように擦れ合う面では、粗すぎると摩耗が早く、滑らかすぎても油膜が保持しにくくなります。
  • 疲労強度:表面の深い谷は応力集中の起点となり、繰り返し荷重を受ける部品では亀裂の起点になりやすくなります。
  • はめあい・接触:締結面や位置決め面では、粗さがはめあいの実質的なすき間や接触剛性に影響します。
  • 見た目・質感:外観部品では、粗さが光沢や触感を左右します。

つまり表面粗さの指示は「この面はどんな役割を持つのか」という設計意図の表れです。だからこそ、図面記号を正しく読み書きできることが実務では欠かせません。

もう少し用語を整理しておきましょう。加工面の断面をたどった線を「輪郭曲線」と呼び、そこから長い波(うねり)成分を取り除いて残した細かい凹凸の成分が「粗さ曲線」です。表面粗さのパラメータは、この粗さ曲線をもとに計算されます。どこまでを粗さと見なし、どこからをうねりとして除くかを決めるのが、後で出てくる「カットオフ」という測定条件です。

表面粗さのパラメータ

表面粗さを表すパラメータはいくつもありますが、図面でよく見かける代表的なものを整理すると次のようになります。まずは名前と意味の目安をつかんでおきましょう。

記号名称意味の目安使われ方
Ra算術平均粗さ凹凸を平均線からの絶対値で平均した値最も一般的。多くの図面はRaで指定
Rz最大高さ粗さ評価長さ内で最も高い山と最も深い谷の差局所的な深い傷を管理したい面に
Rmax最大高さ(旧JIS)旧規格での最大高さ。現行のRzに相当する考え方古い図面に残ることがある
Rq二乗平均平方根粗さ凹凸を二乗平均で表した値解析や光学面などで用いられる
Rzjis十点平均粗さ(旧)山谷の上位・下位を平均した旧指標旧図面で見かける場合がある

実務では圧倒的にRaが主役で、次いでRzが使われます。数値の意味合いが異なるため、RaとRzを直接置き換えることはできませんが、加工面の性質から目安として相互に見当をつけたい場面もあります。その際は表面粗さ換算ツールで目安値を確認すると便利です。

Ra(算術平均粗さ)とは

Ra(算術平均粗さ)は、基準となる平均線から表面の凹凸までの高さを絶対値でとり、それを評価長さにわたって平均した値です。山も谷もいったん絶対値にしてならすため、表面全体としての「平均的な粗さ」を表す指標といえます。数値が小さいほど滑らかで、大きいほどザラザラした面になります。

Raは表面全体の傾向をつかみやすく、測定値が安定しやすいことから、最も広く使われるパラメータです。図面では次のような区切りのよい代表値がよく指定されます。おおよその感覚をつかんでおくと、指示の妥当性を判断しやすくなります。

Raの目安面の状態のイメージ代表的な用途
Ra 0.8なめらかで光沢に近いしゅう動面・シール面・精密なはめあい
Ra 1.6ややなめらか一般的なはめあい面・位置決め面
Ra 3.2標準的な機械仕上げ面一般的な機械加工面の標準指示
Ra 6.3やや粗いあまり機能を求めない加工面
Ra 12.5粗い荒加工面・見えない非機能面

迷ったときは、まず一般的な機械加工面としてRa 3.2前後を基準に考え、そこから機能に応じて細かく(数値を小さく)していくと整理しやすいでしょう。

Raを測るときは、加工目に対して直角の向きで測定するのが基本です。フライスや旋削でできる筋目は方向によって見え方が変わるため、測定方向がそろっていないと同じ面でも値がばらつきます。図面でRaを指示する際にも、必要であれば筋目方向をあわせて示すことで、測る側と作る側の認識をそろえられます。

Rz(最大高さ粗さ)とは

Rz(最大高さ粗さ)は、評価長さのなかで最も高い山の頂点と、最も深い谷の底との高さの差を表します。Raが平均的な粗さを見るのに対し、Rzは「最も悪いところ」を見る指標です。そのため、平均するとならされて見えなくなってしまう局所的な深い傷や、突出した山を管理したい面に向いています。

たとえばシール面では、平均的にはなめらかでも、一本の深い谷(キズ)があると、そこから漏れてしまうことがあります。こうした「最悪値」を押さえたい場合には、Raに加えてRzを併記することがあります。RaとRzは着目点が違うため、片方だけで面の良否を決めつけないことが大切です。

実務では、しゅう動面やシール面などでRaを主指示としつつ、深い傷を避けたい場合にRzを併記する使い方が便利です。両者は着目点が異なるため、Raが同じでもRzが大きい面(=局所的に深い谷がある面)は、用途によっては不合格になり得ます。面の役割を思い浮かべながら、どちらのパラメータで管理すべきかを選ぶとよいでしょう。

新JISの表面性状の図示記号

現行JISでは、表面性状は「く」の字を伸ばしたようなV字の基本記号に、必要な情報を書き添えて指示します。基本記号だけではなく、除去加工の要否や数値・加工方法などを組み合わせて読むのがポイントです。記号の各位置と意味を整理すると次のようになります。

記号の要素見た目意味
基本記号V字(60°の開いた線)表面性状を指示することを示す土台の記号
除去加工が必要V字に横線を追加切削・研削などで除去加工することを要求
除去加工を許さないV字に丸を追加鋳肌・そのままの面を残す(除去してはいけない)
粗さの数値記号の上や左に記入Ra 3.2 などパラメータと上限値
加工方法上側の横線の上に記入「研削」「旋削」など指定する加工法
筋目方向記号の右側に記号で記入=、⊥、Xなど加工目の向き
カットオフ・評価長さ数値のそばに記入測定条件(必要な場合に指定)

読むときのコツは、まず基本記号の形(横線があるか、丸があるか)で「除去加工が要るのか・してはいけないのか」を判断し、次に数値でどのパラメータをどこまで求めているかを読む、という順序です。多くの図面ではRaの上限値だけがシンプルに書かれており、加工方法や筋目方向は必要な面にだけ追記されています。

たとえば「除去加工を表す横線付きのV字」の上にRa 1.6と書かれていれば、「切削などで仕上げ、算術平均粗さを1.6μm以下に抑えること」を意味します。さらにその上に「研削」と加工方法が添えられていれば、その面は研削で仕上げる想定だと読み取れます。このように記号は、土台の形・数値・追記の順に分解して読むと、複雑に見える指示も整理して理解できます。

旧JISの三角記号(▽▽▽)

古い図面や、現場で長く使われてきた社内図面では、表面粗さが三角記号(▽)で示されていることがあります。これは旧JISの表記で、逆三角形の数が多いほど仕上げが細かい(なめらかな)ことを表します。あくまで旧表記なので、現在は数値(Ra)での指示が基本ですが、既存図面を扱うときのために対応の目安を知っておくと役立ちます。

旧記号仕上げの程度おおよそのRaの目安
波形記号(~)鋳肌・黒皮のまま除去加工なし
▽(三角1つ)荒仕上げRa 12.5〜25 程度
▽▽(三角2つ)中仕上げRa 3.2〜6.3 程度
▽▽▽(三角3つ)上仕上げRa 0.8〜1.6 程度
▽▽▽▽(三角4つ)精密仕上げRa 0.2〜0.4 程度

上の対応はあくまで目安で、規格の版や社内基準によって幅があります。旧図面を新図面に描き直す際や、旧記号のまま加工指示を出す際は、対応表を鵜呑みにせず、社内の換算基準や関係者との認識合わせを行ってください。

図面での記入位置と一括指示

表面性状の記号は、原則としてその面を表す輪郭線(外形線)や、そこから引き出した引出線の上に記入します。記号の向きは、図面の下辺または右辺から読める向きにそろえるのが基本です。面ごとに個別に指示するのが基本ですが、部品全体で同じ粗さが多い場合には「一括指示」を使うと図面がすっきりします。

一括指示は、表題欄の近くや部品番号のそばに代表的な記号をまとめて記入し、「特に指示のない面はこの粗さ」という共通ルールを示す方法です。一部の面だけ異なる場合は、その面に個別記号を付け、共通指示のそばに例外を括弧書きで併記する書き方(例:全体はRa 6.3、括弧内に個別値)もよく使われます。読むときは、まず一括指示を確認し、個別記号がある面はそちらが優先される、と理解すると迷いません。

引出線を使う場合は、面から引き出した線の水平部分に記号をのせます。円筒面のように図面上で一本の線として表れる面でも、その外形線の上に記号を置けば、その面全体の粗さを指示できます。記号が図面のどの線に付いているかを見れば、どの面への指示なのかが読み取れます。

加工方法と得られる粗さの目安

表面粗さは加工方法によって達成できる範囲が決まります。むやみに細かい粗さを指定すると、追加工程や高精度な設備が必要になり、コストと時間が跳ね上がります。加工法ごとの目安を知っておくと、現実的で無駄のない指示ができます。

加工方法達成できるRaの目安備考
荒旋削・荒フライスRa 6.3〜25荒取り段階の面
仕上げ旋削・フライスRa 1.6〜6.3一般的な機械加工面
ドリル穴あけRa 6.3〜12.5穴内面はやや粗い
リーマ仕上げRa 0.8〜3.2穴の精度・面を整える
研削Ra 0.1〜1.6しゅう動面・精密面
ラップ・超仕上げRa 0.01〜0.2鏡面に近い高精度面

たとえば「研削でなければ出せない粗さ」を、旋削しか予定していない面に指定してしまうと、工程追加でコストが増えます。図面を書くときは、その面に本当にその粗さが必要かを、機能と加工法の両面から見直すことが大切です。

表面粗さを指定するときのポイント

表面粗さの指定は「細かければ良い」というものではありません。過度に細かい指定はコスト増につながります。次の考え方を押さえると、機能とコストのバランスがとりやすくなります。

  • 機能に必要な面だけを細かく指定する:シール面・しゅう動面・精密なはめあい面など、役割のある面に絞ってRaを小さくします。
  • 一般面は一括指示でまとめる:機能を求めない面は共通の粗さで一括指示し、図面を簡潔に保ちます。
  • 加工法とコストのバランスを意識する:達成できる粗さは加工法で決まるため、想定工程で無理なく出せる値を選びます。
  • RaとRzの使い分けを意識する:平均的な粗さはRa、局所的な深い傷はRzと、目的に応じて選びます。

なお、RaとRzのおおよその対応や、加工面から見た粗さの目安を確認したいときは、表面粗さ換算ツールが便利です。また、粗さと同じく部品の機能を左右する幾何公差の基礎や、寸法のばらつきを一括で管理する普通公差(一般公差)もあわせて理解しておくと、図面の読み書きがぐっと確実になります。

参考になる書籍

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使う上での注意

本記事で紹介した記号の意味・数値の目安・加工法ごとの粗さは、あくまで実務で使いやすいように整理した一般的な目安です。表面粗さや表面性状の正式な定義・図示方法は、JIS B 0031(製図−表面性状の図示方法)やJIS B 0601(表面性状−輪郭曲線方式)などの規格で定められており、規格は改正されることがあります。

実際の設計・製図では、必ず最新版の規格および社内・取引先の設計基準を確認したうえで判断してください。また、旧記号と新記号の対応や粗さの目安値は幅を持った目安であり、機能上重要な面では試験・実測による検証を行うことをおすすめします。本記事の内容の利用によって生じたいかなる損害についても、当サイトは責任を負いかねます。

この記事を書いた人

和田 慎(わだ しん)。機械設計歴8年。個人事業主として、主に自動車業界向けの専用機(専用装置)の設計を手がけています。現場で実際に使う計算や図面の知識を、新人の頃につまずいた経験をふまえて、できるだけわかりやすくまとめています。記事の数値や規格は目安であり、実際の設計・加工はJIS規格・メーカー資料・社内基準をご確認ください。

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